ご挨拶
 はじめまして、栗田と申します。
 この亀山市内でもたくさんの方々が音楽活動をされている事を知り、私のような若輩者ではありますが、今まで培ってきた経験が、皆様の活動や楽しみのちょっとしたお手伝いになれば、と思い、掲載させていただくことになりました。
週1回くらいのペースであらゆるジャンルからアルバムレヴューをさせていただきたいと思っております。
お気づきの点がありましたら、こちらとしても勉強になりますので、どうぞご意見、アドバイスなどお寄せいただけると幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。
                                                        くりたぬき
ご意見等はここ 
 


「くりたぬきによる今週の一枚〜1」     2004/7/30 投稿
   武満徹:混声合唱のための〈うた〉
           「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」(晋友会合唱団)

まず何から紹介しようかいろいろ迷いましたが、合唱団体で活動されている方が多くいらっしゃる様なので、この一枚を。
とは言え、合唱に携わっている方々なら既にご存知の有名な作品だと思います。

武満徹、と言うと、『ノヴェンバー・ステップス』に代表されるような難解な現代作
曲家、のイメージが強いかもしれません。
でもちょっとこのうた達に耳を傾けてみてください。
「シャンソンが始まりだった」と武満氏自らが語ったように、そのメロディ、リズムは実に伸び伸びしており、ドビュッシー、メシアンなどに傾倒していたことが伺えるような美しい不協和音からなる独特のハーモニー。
『○と△の歌』ではジャズを体ごと愛していた武満氏の楽しそうな姿がうかがえるようです。
そう、彼の作った歌は全て自然体で聴くのが、楽しめる一番の近道だと思います。

私が初めて彼の作品に触れたのは高校時代、合唱部員の頃でした。
実は顧問の先生に何度も勧誘され、半ば義理、のような形で参加していた不真面目な部員だった私。
それが津の合唱団体「うたおに」による『島へ』を初めて聴いて、背筋が寒くなるほどハーモニーの美しさに開眼しました。

もうひとつ特筆すべきは谷川俊太郎氏による「詩」との見事な調和。
元々谷川氏の言葉の世界は好きだった私ですが、武満氏の作り出すメロディに乗ることで、深く心に染み入ります。
この二人による作品『死んだ男の残したものは』。
難しい言葉は何も使っていないし、メロディも素朴な流れの繰り返しです。
「易しく伝えることほど難しい」を見事体現したこの作品、なにかと紛争の絶えない今の世情に捧げ、後世にも伝え残したい一曲です。
アメリカがジョン・レノンの『イマジン』を用いるように、こちらはこの歌を広く口
ずさんでもらえたら、なんて思います。

クラシックだとか現代音楽だとか、世間で言われるほどそのようなカテゴリーに捉われることなく、音楽そのものを心から愛し、数々の名作の生み出した武満徹氏。早すぎた死が本当に惜しまれます。
この合唱作品集なら、大人から子供までかしこまることなく楽しめるのではないでしょうか。
                                             つづく

 
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